NEW 2025.09.30
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スポーツは「観るだけ」でも健康によい?

スポーツは「観るだけ」でも健康によい?

 ようやく厳しい暑さも落ち着き、いよいよスポーツの秋を迎えます。スポーツを自分自身が行うことが健康増進に役立つことはよくいわれているとおりです。それでは、応援する立場としてスポーツを「観る」ことに健康増進効果があるのでしょうか。そのことを検証した論文が日本の研究者により2024年に出されました。1)

 Kawakamiらは、6,327人を対象にスポーツ観戦と健康状態・ウェルビーイング(幸福度)の関連を縦断的に調査しました。特徴的なのは、スポーツ観戦として、現地で直接観戦する場合だけでなく、テレビなどのメディアを通してスポーツ観戦する場合も検証している点です。

現地観戦の効果

 研究によると、過去1年間に現地でのスポーツ観戦が2日以上であった人(21.7%)は、過去1年間に1日もなかった人(65.5%)に比べ、心理的ストレスを抱えるリスクが低く、観戦頻度が高いほど心理的ストレスのリスクが低下する傾向がみられました。さらに、脂質異常症の割合が低く、生活習慣の改善に前向きであることが示されています。また、働いている人に限って分析すると、現地観戦を行った人は、仕事にやりがいや誇りを感じ、熱心に仕事に取り組み、仕事から活力を得ている状態を指す「ワークエンゲイジメント」が高まることが示されました。

テレビ観戦の効果と注意点

 一方で、テレビやインターネット配信などのメディアでの観戦の場合はどうでしょう。過去1か月に1日もテレビなどでスポーツ観戦をしなかった群(41.6%)に比べ、週に1日以上観戦していた群(27.8%)では、からだを動かさない者の割合や、朝食を抜くリスクも少なく、主観的な幸福度が高いことが示されました。

 しかし同時に、テレビ観戦には注意点があります。観戦頻度が高い人ほど、肥満度の上昇や高血圧症・糖尿病のリスクも高まるといったネガティブな側面もあることが分かりました。これは、いわゆる「カウチポテト」——ソファに座ったままお菓子を食べながら観戦する習慣が関与している可能性があります。つまり、観戦そのものは心の健康や幸福度を高める一方で、観戦スタイル次第では生活習慣病のリスクを抱えることになるのです。

秋は「観る」スポーツも楽しもう

 このように、スポーツ観戦は、現地で直接観戦する健康的な意義は大きいですが、テレビなどのメディアでの観戦であっても、幸福度や良好な生活習慣を獲得することにつながるといえます。特に、スタジアムなどに足を運んで観戦する経験は、心身の健康に良い影響を及ぼし、仕事の意欲向上といった幅広い効果が期待できます。一方で、テレビなどメディアでの観戦についても、観戦時の姿勢や食習慣に気をつけることで、幸福度を高める手段となり得ると考えられます。

 これから秋にかけて、プロ野球界のクライマックスシリーズやメジャーリーグのポストシーズン、さらには地域の運動会など、スポーツ観戦の機会は多くあります。自分で運動することも大切ですが、スポーツに真剣に取り組む選手たちを応援し、働きがいや健康・幸福を獲得しましょう。それには、現地でのスポーツ観戦が一番ですが、テレビなどでの観戦も、お菓子等の食べ過ぎに注意しておけば、健康増進、幸福度アップになります。

 スポーツの秋。体を動かす楽しみとともに、観る楽しみを味わいながら、心身の健康と幸福を育んでみてはいかがでしょうか。

参考文献
1) Ryoko Kawakami, Naruki Kitano, Yuya Fujii, Takashi Jindo, Yuko Kai, Takashi Arao. Association of watching sports games with subsequent health and well-being among adults in Japan: An outcome-wide longitudinal approach. Preventive Medicine 2024; 189: 108154.

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