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ニートって知っていますか?
ニートといっても、学校に通っていない、働いていないといったニート (NEET: Not in Education, Employment, or Training)ではありません。NEAT (non-exercise activity thermogenesis)のことで、運動によらないエネルギー消費と呼ばれています。
ニート(NEAT)は、2005年に有名な科学誌であるScience誌に掲載され着目を集めた概念です。人のエネルギー消費を細かく調べた論文で、図1の左側の棒グラフに示すように、半分以上が安静代謝とよばれる主に生命を維持するために使っているエネルギー、それ以外に食事誘発性熱産生(※食事を食べた後にからだがぽかぽかすると思います。このように食事を食べることで生じる熱産生をいいます)と運動した時に消費するエネルギーだけではないことが示されました。それが運動によらないエネルギー「ニート」で、ニートが占める割合は思いのほか大きいことが証明されました。
自称運動不足の方を集め、その人たちのニートを調べた結果が図1の右側の円グラフです。
自称運動不足で太っている人と、自称運動不足でもやせている人がいますが、その人たちのニートの内訳を見てみると、やせている人の方が、太っている人よりも立ったり歩いたりしている時間が153分長いことが分かります。これをエネルギー換算すると約350キロカロリー。これは、モンブランケーキ1個分に相当するエネルギーになります。その蓄積が体型に影響しているということになります。
この結果は、普段の日常生活の中で、座っている時間を減らし、意識して立ったり歩いたりする時間を増やすことで、体型にも効果を見ることができる、ということも意味します。実際、日本での働いている人たちを対象にした研究で、通勤で往復20分、つまり、片道わずか10分以上、徒歩で通勤している集団は、往復で10分未満を1とすると、約3割、高血圧の発症や糖尿病の発症を抑制していることが報告されました(図2)。
また、次の様な効果も報告されています。図3に示しますとおり、1週間に150分、つまり、1日約20分ちょっと身体活動時間を増やすだけで、心臓の病気、糖尿病、乳がん・大腸がんの発症を10%から18%抑制することができ、また、全死亡率も16%抑えることが報告されています。
ここでいう、「身体活動」とはどういうものかについて説明します。身体活動は、「安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動」と定義され、生活活動と運動の合計が身体活動となります。運動は、「計画的・定期的に、体力の維持・増進等の目的を持って行う活動」、生活活動は、「日常生活での家事・労働・通勤・通学などに伴う活動」です。運動習慣を付けることも大切ですが、日常生活でいかに身体を動かすようにしていくか、という点にも注目する必要があるということになります。
わが国の身体活動についてのガイドとして、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が最近公開されました。ここでも身体活動を増やしていくことの重要性を主張しています。加えて、「座位行動」という、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することも推奨しています(立位困難な方も、じっとしている時間が長くなりすぎないように、少しでも身体を動かすことを推奨)。
これまで説明してきましたように、生活活動を増やすことはとても重要です。「週3回、30分から1時間、運動を行う」というととてもハードルが高くなりますが、「1日20分程度、歩くようにする」というと、かなりハードルは低くなります。1日20分程度は、朝10分・夕方10分と分けても問題ありません。自身のライフスタイルに合わせて、隙間時間で身体活動を増やしていくことが大切です。これを読んだ今から、早速はじめてみませんか。