- 食事
いろいろ食事は指導されますが、やはり最後は食事バランスです

減塩、野菜や果物はたくさん、など食事指導ではいろいろなことを言われると思います。しかし、最終的にはやはり「食事バランス」がとても重要です。このコラムでは、食事バランスの重要性についてのエビデンスを紹介したいと思います。
健康診断を受けた後に、お医者さんや保健師さん、管理栄養士さんたちから塩分を控えて、野菜や果物を食べるようになど、いろいろと保健指導を受けたことがある方は多いと思います。今回は、健康保持増進のための食・栄養について書きたいと思います。
まず、減塩がなぜ必要かという点についてです。
現在日本人はどれくらい食塩を摂取しているでしょうか。日本人の男女別食塩摂取量を図1に示します。年々減少しているとはいえ、9~10 g/日です。それでは、1日にどれくらいの摂取量を目指せば良いのでしょうか。正解は、7g/日です。このままでは達成が難しいことは明らかです。(ちなみに、世界基準では、5g/日が目標とされています。)

そこで、わが国が2024年度から取り組んでいるのが「自然と健康になれる環境づくり」という取り組みです。これは、わが国の健康施策の一つ「健康日本21(第三次)」の一環として行われているものです。健康のための取り組みを進めるだけですと、健康意識の高い人たちは、より健康になっていくことになりますが、そうでない人たちは変わらない、あるいは、年々健康状態が悪くなっていくことになります。そこで、着目しているのが「環境」という視点です。スーパーなどで手に取った商品が減塩されており、かつ、これまでどおり(あるいは、それ以上の)おいしさを保っているような社会を、産学官民が連携して取り組んでいます。福岡県でも2022年に「食品減塩推進協議会」が設立され、産学官民が連携し、2023年度からはスマートにソルトを使う減塩プロジェクト「TRY!スマソる?」が進められています。現在、100種類以上の「スマソる?レシピ」が公開されていますので、是非アクセスして、減塩でもおいしいことを実感されてください。

続いて、野菜や果物についてです。よく、保健指導を受けると、野菜や果物を食べることを勧められると思います。その理由の1つを説明いたします。野菜や果物を食べることによる脳卒中の予防効果について、日本人を対象とした大規模な調査が行われています。約4万人の男女を18年間フォローアップした結果、野菜や果物を食べるのが1日1回以下の人たちと比べ、毎日食べている集団は、脳卒中による死亡が20-35%も抑制された、と報告しています(Sauvaget, et al. Stroke 2003; 34: 2355)。やはり、野菜や果物は、病気の予防にとても効果的だと言えます。
わが国を代表するコホート研究として、The Japan Public Health Center based prospective (JPHC) studyがあります。40-69歳の男女14万人以上を5・10・15年に観察しており、多くの知見が提供されています。食品や栄養素によるがんへの影響についてまとめられていますが、表1からも明らかなように、同じ食品や栄養素であっても、ある疾患のリスクを高める一方で、別の疾患のリスクを低下させることがあります。
そこで、がんをはじめ生活習慣病の予防には、やはり、偏りなくバランスの良い食事を取ることが重要だということになります。わが国には、皆さんも見たことがあるであろう「食事バランスガイド」があります(図2)。


これは、1日に、「何を」、「どれだけ」食べたらよいかを考える際の参考にできるように、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです。この「食事バランスガイド」を元に、バランスの良い食事を心がけている人は、バランスの悪い人と比べ総死亡が7%減少し、脳血管疾患は11%減少することが示されています(Kurotani, et al. BMJ 2016; 352: i1209)。
賢く減塩に取り組み、意識して野菜や果物を多く食べ、食事全体のバランスが良くなるようにして、充実した食事を取り、健康保持増進に取り組んでいきましょう。