NEW 2025.02.17
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からだを動かすことは、こころの面にも良い効果があります。

からだを動かすことは、こころの面にも良い効果があります。

運動習慣があるほど、こころの面によい効果があることのエビデンスがあります。身体的な効果だけではなく、こころの面にも良い効果をもたらすことをコラムで説明し、心身の健康のために運動を続けていただければと思います。

 からだを動かすことは、こころの面にも良い効果があります。
 これまで、主に身体を動かすことによる身体的な健康の話をしてきました。今回は、こころの面にどのような効果があるかについてまとめたいと思います。
 図1をご覧下さい。これはわれわれが幾つかの自治体職員を対象に調査した結果です。横軸は、1週間当たりの運動実施時間、縦軸はGeneral Health Questionnaire (GHQ)といって、こころの健康度を調査する時に用いられる質問票のスコアで、点数が高いほどこころの健康度が悪いことを示します。図1から明らかなように、運動の量が多い人たちほど、こころの健康度が良好であることが分かります。


図1


 それでは、これから運動をはじめることで、こころの面に良い効果はあるのでしょうか。以前私は、北九州市で取り組んでいた「健康へのパスポート事業」に関わっていました。「健康へのパスポート事業」は、12週間の有酸素運動を中心とした運動の実践(60分、週2−3回)と、管理栄養士による食事指導による健康保持増進の取組で、さまざまな視点で検証を行ってきました。その中で、働く人たちを対象にした解析の結果、12週間の運動療法と食事療法で、こころの健康度が高まったことを示しました(図2)。


図2

 また、12週間の運動療法・食事療法によって「仕事の満足度」が有意に増加することを認めました(図3)。何が仕事の満足度に影響したかの解析も行ったところ、睡眠の質の向上が影響していることを見いだしました。このように、運動習慣があると、こころの面に良い効果があり、運動習慣を身につけることによって、こころの面に良好な効果があることがいえます。


図3

 さらに、2024年の1年間に報告された、運動によるうつ病に対する効果を見た218の研究による、合計14,170例のメタアナリシス※1によると、運動は有効な治療法であることが示されました。運動強度に比例して効果が大きく、運動強度が強いウォーキングやジョギングに加え、ヨガや筋力トレーニングが最も受け入れやすい運動であることが示されました(Noetel M, et al. BMJ 2023;384:e075847)。

 これまで自分が運動をする側の視点でその効果を述べてきましたが、つい最近報告された論文では、スポーツ観戦でも心身に良好な影響があることが日本人を対象とした縦断研究※2で示されました。これによると、現地でのスポーツ観戦が過去1年間に1日もなかった群に比べ、2日以上観戦していた群は、中等度の心理的ストレスを抱えるリスクが17%低く、その頻度が高いほど効果が大きいことも示されました(Kawakami, et al. Prev Med 2024;189:108154)。また、テレビなどのメディアでの観戦であっても、過去1か月間に1日もなかった群に比べ、週に1日以上観戦していた群は、幸福感が高い等の良好な効果を認めました。ただし、肥満度や高血圧・糖尿病のリスクも増加することは示されていますので、その点はご注意を。

 なお、座りっぱなしの健康影響として、肥満、2型糖尿病、高血圧、喘息、乳癌、腰痛、骨粗鬆症、便秘等々、数多くの身体的な健康障害を引き起こすことが分かってきています。また、学習記憶障害、認知機能障害、精神的健康度の低下、そして社会参加の低下といった、こころの面への影響も明らかになってきています。さらに、日本人の1万4千人のデータから、1時間以上歩いたり、現状よりも30分以上歩く時間を増やしたりするだけで、認知症の発症を14-18%も減らすことが可能であることが示されました(図4)。

 まずは、少しでも今より身体を動かしてみませんか。きつい運動でなくても大丈夫です。スポーツを現地で観戦することでもよさそうです。今日から、10分でもよいので動いてみましょう!


図4

※1 メタアナリシス:
ある程度似ている研究の複数の結果を統合し、ある要因が特定の疾患と関係するかを解析する統計手法です。ひとつひとつの研究の結果が矛盾している場合でも、たくさんの研究結果を解析することで、より総合的な評価をすることができます。
(「がん情報サービス」より一部改変https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/meta_analysis.html)

※2 縦断研究
特定の集団を長期間にわたって継続的に追跡調査し、同じ対象者から繰り返しデータ収集する研究のこと。「原因」と「結果」のような因果関係を示すことが可能です。

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